さて、今回は、「記憶力を高める」というお話をしたいと思います。
記憶力は、学校の成績を上げるうえで、または仕事の成果を上げるうえで、または人生を有意義に過
ごしていくために、大変重要な要素の一つです。今週から、「記憶力を高める」についてお話していき
ます。
まずは、人間の記憶のメカニズムについてお話していきます。
みなさんは、「中学生のときにはやった曲を1曲思い出してください。」
といわれると、ほとんどの人が、何かしら1曲を思い出すでしょう。
たとえ、何年間もそのことについて思い出したことがなくても、「あっ、あの曲。」と思い出すことがで
きると思います。
なぜ、十年以上も前にしまいこんでいたものを、すっと思い出すことができるのでしょうか?
記憶とは、時間を超えて脳の中に保持されてきた意識です。人はこれをよく思い出といったりします。
記憶には、種類があります。
まず身体で憶える「手続き記憶」です。
みなさんが、自転車に乗ったり、自動車の運転をしたり、あるスポーツをするために覚えたことはこの
「手続き記憶」といいます。
これに対して、ある概念などを覚える記憶を「陳述記憶」といいます。
言葉を覚えたり、人の顔や名前を覚えたり、地名を覚えたりするために覚えたことは、「陳述記憶」と
いいます。
この陳述記憶にも2種類の記憶があります。
すぐに忘れてしまう「短期記憶」とずっと覚えていることができる「長期記憶」です。
このうちの「短期記憶」にかかわるのが、脳の中でいうと「海馬」という部位です。
「海馬」は脳の奥深くになるのですが、昔、てんかんの症状をやわらげるために、この海馬を手術で切
り落としたところ、さっきのできごとや、会った人のことを覚えられなくなったという患者さんもいた
そうです。
つまり、人は、まずこの海馬に記憶する事柄をおいておくのです。
しかし、この海馬、簡単にいうとちょっと斜めに傾いた板と思ってください。
その上に物をのせても、時間が経つと滑り落ちてなくなってしまいますね。
そこで、この海馬におかれた事柄を、脳内の記憶する部分、側頭葉に収めなくてはなりません。
それを収めることで「長期記憶」となって、何日たっても忘れないようになるのです。
そう考えると、まず海馬にのった事柄をいかにして、脳内にとどめ長期記憶にするかが重要であること
はおわかりのことと思います。
そこで、出てくるのが神経と神経をつなぐ部位「シナプス」です。シナプスは、神経から出た手足のよ
うなものです。これを伸ばしてつないでいくことで、「短期記憶」は「長期記憶」となっていきます。
では、このように短期記憶を長期記憶に変え、記憶力を高めていくにはどうしればよいか?
まず、ある飲み物で記憶力はあがります。
それはコーヒーです。もっといえば、コーヒーに含まれるカフェインという物質です。
カフェインは集中力を高めてくれ、記憶力もアップしてくれます。
また、フィジカルエクササイズやメンタルエクササイズも記憶力アップに有効です。
また、記憶に適した時間帯もあります。
記憶は、満腹時よりも空腹時の方が、高まるともいわれています。
そこで、夕食前の1時間~2時間が、記憶力を要する勉強に最適です。
また、起床時も記憶力アップに有効です。しかし、起床時は、少し頭を動かすトレーニング(準備運動)
を行ってから勉強した方がいいと言われます。
次回は、記憶力をアップしていく方法についてお話ししますね。
<遺伝子にまつわる今日のひとこと>
今週は、記憶に関する遺伝子「BDNF」についてです。
「BDNF」は、脳由来神経栄養因子のことで、主に神経に栄養を与える機能があり、細胞の成長と増殖
を促進します。中枢神経における神経細胞の発達、生存において重要な役割を果たしています。
その「BDNF」遺伝子の型が「GG型」についてです。
「GG型」は、意味記憶力に優れたタイプです。海馬から脳内に記憶を保持することに長けているといえ
ます。これは、見たもの聞いたものをよく覚えていることや、意味やわけをよく理解した上での記憶力
が優れています。「なるほど」と納得したことについては、よく憶えていくことができるでしょう。
「GG型」は、記憶することについては、コツコツと意味やわけを確認しながら、覚えていこうとします。
物事について、意味や使い方などをしっかりと教えながら記憶するようにしてみて下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました。
尚次郎